〔相続手続き〕
身内が亡くなったときは次のような手続きが必要となります。
- 葬儀、法要
- 墓の手続き
- 役所関係の手続き
- 遺産相続の手続き
このうち、「遺産相続の手続き」は以下のものがあります。
- 遺言書の有無を調査・遺言書の検認3か月以内
- 相続人(戸籍)調査3か月以内
- 相続財産(遺産)調査3か月以内
- 相続放棄・限定承認3か月以内
- 遺産分割協議
- 預貯金・不動産の払戻し・解約・名義変更
- 相続税申告(10か月以内)
1.遺言書の有無を調査・遺言書の検認
遺産分割において遺言書がある場合は、遺言書に書かれた内容が優先となりますので、まずは遺言書の有無を確認する必要があります。
遺言書は3種類あります。「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」です。
最も一般的なのは「自筆証書遺言」です。この場合故人が自宅に保管していることが多いですが、改ざんを疑われるなどのトラブルを避けるために、もし見つけた場合でも開封してはいけません。家庭裁判所で検認手続を受ける際に開封します。
2.相続人(戸籍)調査
遺言書がない場合は、相続財産は相続人同士で自由に分けることができます。その大前提として、相続人を確定しなければ始まりません。相続人を確定するためには、故人が生まれてから亡くなるまでの家族関係を戸籍でチェックする必要があります。
戸籍のチェックで父親が認知した隠し子が見つかることがあります。仮に隠し子がいれば、その子も相続人に加わります。
3.相続財産(遺産)調査
相続人を確定したら、次は故人の財産を確定させます。通帳、不動産の権利証などを探します。不動産がある場合には、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、登記の名義人に故人以外の人が名を連ねていないか確認します。また、銀行の担保に入っていないかも確認します。預金や保険、有価証券などは銀行や保険会社、証券会社などに残高証明書を発行してもらうのがよいです。借金はマイナスの財産になりますので、銀行等で確認が必要です。
4.相続放棄・限定承認
相続財産を確定して、相続財産よりも負債の方が大きい場合は、相続放棄を検討すべきでしょう。遺産を放棄すれば、プラスの財産を承継しない代わりに、借金も放棄できます。
借金を放棄するのではなく、少しでも返済したい場合は、相続財産がプラスになる範囲で返済する「限定承認」という方法もあります。
遺産の放棄も限定承認も、相続の開始を知ったときから3か月以内に故人が住んでいた住所地の家庭裁判所に手続きをしなければなりません。
5.遺産分割協議
相続人と相続財産が確定したら遺産分割協議を行い、遺産をどう分けるか相続人全員で話し合います。相続人が1人でも欠けた場合は、協議は無効になります。しかし、全員が1カ所に集まって話し合う必要はありません。書面で意見を伝えたり、後日決定事項の了承をとったり、代理人による出席でも全員参加したと見なされます。相続人の中に未成年者や行方不明者、認知症などの人がいることがありますが、これらのケースでは、親権者や未成年後見人、不在者財産管理人、成年後見人などが本人に代わって協議に参加します。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は決まった用紙はなく、書き方は自由です。書式の指定も特になく、縦書きでも横書きでも、複数枚にわたってもかまいません。記載すべき内容は「協議の内容」「具体的な財産の中身と相続した人」「相続人全員の氏名、住所、捺印」の3つです。加えて全員の印鑑証明書も必要です。協議書が複数枚に及んだときには、紙と紙の境目に割印が必要です。
作成した遺産分割協議書は、不動産の名義変更、金融機関での相続手続、相続税の申告などで使用していきます。銀行口座の凍結解除などの各種手続で遺産分割協議書の提出が求められる機会は少なくありません。遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印の押印などが必要なので、足りなくなったからといって、また改めて作成するのは大変な手間です。作成の際に、最低でも相続人全員分にプラス2通程度は作成しておくことをおすすめします。
6.預貯金・不動産の払戻し・解約・名義変更
相続が起こると預金口座が凍結されますので、口座にある現金の払い戻しを受けたい場合は、所定の手続が必要です。手順は金融機関によって異なりますが、一般的には相続届出書に相続人全員の署名と実印の押印、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類をそろえて該当の金融機関に提出します。
不動産は登記の名義を変更するために登記申請書を法務局に提出します。登記申請は司法書士に依頼するのが一般的ですが、自分で書類を作成して申請することもできます。作成・提出の必要があるのは登記申請書とそのほかの添付書類です。あれば遺言書をなければ遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を提出します。
7.相続税申告(10か月以内)
故人の遺産を相続すると、「相続税」がかかります。ただし、遺産の全部に相続税がかかるわけではなく、基礎控除額を超えた場合に、発生するものです。
基礎控除額の基準は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば、法定相続人が3人であった場合、3000万円+600万円×3で4800万円です。つまり、この場合遺産が4800万円を超えると相続税がかかるということです。ただし、相続税がかかるのは亡くなった人のうち8%程度です。
もし相続税の対象になったら、亡くなった翌日から10か月以内に、税務署に申告しなければなりません。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例により、納付すべき相続税額がゼロになる場合でも、申告だけはする必要があります。
申告義務は誰か一人にではなく、相続人全員にあります。申告書を共同で1通作成したうえで第1表に相続人全員が連署押印し、故人の住所地を所轄する税務署に提出します(令和3年4月1日以降の申告から署名・押印は不要になりました)。